日本赤十字九州国際看護大学
クリティカルケア・災害看護領域
ノンテクニカルスキル
チームビルディング
良好なチームを作成するために
最も有名なノンテクニカルスキル教育プログラムは、チームステップス (TeamSTEPPS:Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safetyの略)です。このチームステップスは、医療の質(成果・安全)を高めることを目的に、良好なチームワークを作り上げるためにチームで取り組む方法がまとめられたプログラムです(米国国防総省や航空業界などのHROでの事故対策実績を元に米国で作成れた経緯があります)。チームステップスでは、安全性向上に必須なノンテクニカルスキルを高める方法をご紹介しています。
1. 患者もチームの一員として参加してもらう
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チームを 結 成 する
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チームメンバーの役割と責任を割当てる、または確認する
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責任感のあるチームを維持する
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患者と家 族をチームに含める
2. コミュニケーションスキルを身につける
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簡潔・明確・具体的で適時の情報を提供する
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入手できる全ての情報源から情報収集する
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伝 達された 情 報をチェックバックによって検 証する
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S B A R 、コ ー ル ア ウ ト 、チ ェ ッ ク バ ッ ク 、ハ ン ド オ フ を 活 用 し て 効 果 的にチームメンバーとコミュニケーションする
(1)抜けなく重要な情報を報告する:SBAR(エスバー)
situation(状況)、background(背景)、assessment(評価)、recommeendation(提案)の順番に、報告する方法です。潜水艦などで、簡潔に必要な情報を伝えるために開発されました。
(2)コールアウト:声出し指示・確認
緊急事態の時全てのメンバーに同時に伝える
特定の個人を名指しで指示する(責任を明確にする)
例)
リーダー:『意識レベルは?』
看護師A:『JCS 300』
リーダー:『呼吸は?』
看護師A:『呼吸弱く、減弱しています』
リーダー:『あなた、挿管準備をお願いします』
(3)チェックバック:再確認
発信者が意図したように情報が伝わったかをチームで、共有する方法
例)
リーダー:『アドレナリン1mg 静脈注射してください』
看護師A:『アドレナリン1mgを静脈注射します』
リーダー:『はい、お願いします』
(6)ハンドオフ(申し送り、業務の引継ぎ)
看護というか医療は1人ではできません。多人数で一緒におこないます。ですので、日勤から夜勤へ業務を引き継ぐといったことがたくさんおこります。そのときに、上手に申し送りできないと、医療ミスがおこり、年間多くのひとがこうした単純なミスで死亡しています。下記は、効率的に抜けなく重要なことがらを申し送る(業務を引き継ぐ)ためのツールです。
3.リーダーシップ
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チームの目標とビジョンを特 定 する
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チームのパフォーマンスを最大限にするために資源を効率的に活用する
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チーム内で業務量のバランスをとる
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適切ならば、業務や役割を委任する
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ブリーフ、ハドル、デブリーフを行う
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チームワーク 行動のロールモデルを示す
(1)効果的なチームリーダー
効果的なチームリーダーの存在は必須です。ただし、チームリーダーは誰がなっても大丈夫です。
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チームをしっかりまとめる
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明確な目標を同定し、はっきりと 伝える(例:計画)
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業務と責任とを割り当てる
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計画をモニターし修正する;変更 を伝える
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チームのパフォーマンスをレビュー する;必要ならフィードバックする
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資源を管理し配分する
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情報共有を推進する
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チームメンバーが互いに支援する ように奨励する
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学習環境において対立の解決を 促進する
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効果的チームワークのモデルを 示す
(2)ブリーフ、ハドル、デブリーフ?
ブリーフ(打ち合わせ)
だれがそのチームにいますか?
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全員が目標を理解し、同意して いますか?
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役割と責任が理解されて いますか?
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私達のケアの計画は何です か?
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この勤務時間帯のスタッフと 医療提供者の人数はどうなっ ていますか?
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チームメンバー間の業務量は どのように配分しますか?
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どんなリソースがありますか?
ハドル(途中協議)
臨機応変な打合せ。
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状況認識の再確認
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既に実施されている計画の強化
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その計画を調整する必要があるか?
デブリーフ(振り返り)
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コミュニケーションは明確で したか?
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役割と責任が理解されていま したか?
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状況を継続して把握していま したか?
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業務量の配分は適切でしたか?
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業務の支援の要請または 支援の提供をしましたか?
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エラーがありましたか? 回避されましたか?
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リソースは十分でしたか?
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うまくいった事は何ですか?
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改善すべき事は何ですか?
3.お互いの 状況をよくモニターする
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患 者 の 状 況をモニターする
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チ ー ム メ ン バ ー を モ ニ タ ー し 、安 全 を 確 実 に し エ ラ ー を 回 避 す る
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安全と活用できる資源(機 器など)の有無について環境をモニターする
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目標への進捗をモニターし、ケア計画の変更を要する変化を同定する
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メンタルモデルの共有を確実にするためにコミュニケーション
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を促進する
(1)クロスモニタリング(相互モニター)
有害なエラーを減らすために
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他のチームメンバーの行動をモニターする
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他の人のミスを見つけ、安全を維持するためのセーフティネットを提供する
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お互いを気に掛ける
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メンタルモデルを共有する
(2)何をモニターするか?STEP(ステップ)=状況モニターの要素
下記のポイントにそって、状況モニターすると抜けなく安全なモニタリングが行えます
suatus
患者の状況
- 患者の病歴
- バイタルサイン
- 投薬状況
- 身体所見
- ケア計画
- 心理社会的状況
Team
チームメンバー
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披露
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業務量
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業務パフォーマンス
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スキル
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ストレス
environment
環境
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施設の情報
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管理的な情報
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人材、人員
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的確なトリアージ
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設備、機器
Progression
目標に向けての進歩
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チームが担当する患者の状態は?
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既存のチームの目標は?
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チームの業務、活動は?
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既存の計画は、まだ適切か?
4. 相互に支援しあう
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業務に関連した支援・補助を提供する
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適 時で建 設 的なフィードバックをチームメンバーに提 供する
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アサーティブな主張、2回チャレンジルール、またはCUSを活用し、効果的に患者のために主張する
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対 立 を 解 決 するた め に2回 チャレンジルール や D E S C スクリプトを活用する
(1)チームメンバーの業務支援を積極的に行う
他の人々の業務を支援することは、強いチームを作る
・業務過負荷時にはメンバーがお互いに助け合う
・効果的なチームは、患者の安全の観点から必要な全ての支援の要請や支援の提供を行う
・チームメンバーは、支援が積極的に求め、提供されることが期待できる環境を育む
(2)適切なフィードバックをする
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適時:行動がなされたあとすぐにフィードバックする
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敬意:個人の資質ではなく、行動に焦点をあって、敬意を持ってフィードバックする
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特定:修正や改善を必要とする特定の業務や行動に関連づけてフィードバックする
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改善:今後の改善のために、具体的にフィードバックする
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思いやり:チームメンバーの感情を考慮し、否定的な情報は公平で敬意を持ってフィードバックする
(3)患者擁護(アドボカシー)と主張(アサーション)・協力
チームメンバーと見解が一致しない場合は、患者を中心に考え患者を擁護する姿勢でいる方がよいとされます。また、意見が一致しない場合も、自分の意見をしっかりと相手に伝える必要があります。このとき問題に対する認識や事実を率直に伝える必要があります。ただし、相手を傷つけるような、攻撃的な姿勢ではダメで、最大限、相手に配慮する必要があります。
(4)2回チャレンジルール
誰かに、必要なことを伝えたいとき、相手が忙しそうだと、後回しにされてしまうことがあります。アサーティブな主張が無視された、退けられた場合に、1度チャレンジしてダメだったとしても、もう一度伝えるように、努力してみましょう。もし、まだ課題が解決されず、安全上の問題がある場合には、より強力な行動をとる方が良いとされます(上司への報告など)。また、このルールを組織の共通認識として持っていると、格段に伝え安くなります。
(5)CUS(カス)
Concerned:心配です!
Uncomfortable:不安です!
Safety Issue(Stop):ストップ!安全の問題です!
(6)DESC(デスク)スクリプト
DーDescrive:具体的なデータを提供し、問題となっている状況や行動を説明する
EーExpress:その状況に対する懸念を表しましょう
SーSuggest:代案を提案し、同意を求めましょう
CーConsequences:意見の一致をめざして、チームで決めた目標を基に、結論を述べましょう。